1.乾為天(けんいてん)

キーワード

天・成長・上昇・創造

卦辞
願いは大いに通じるであろう。常に正しい態度をとるとよい。この卦は天の働きが健やかであることを意味している。よって君子はこの健やかさに則って努力し、休むことなく自らを成長させることが大切なのである。

象伝
天体の運行は健やかでやむことがない。君子はこの健やかさにのっとって、みずから努め励むことを怠らないのである。

解説
ここでいう天とは、万物をつかさどる天然自然の道理を意味します。その働きが乾(健やか)であることから、この卦は宇宙における創造的な力の発露を示しています。例えるならば、動物や植物などの多種多様な生命が天に向かってグングンと成長する様子をイメージするとよいでしょう。人間の創造力は尽きることを知りません。易が成立した三千年前、どうして人類が天に向かい月まで到達することを予想できたでしょうか。あなたはその無限大とも言える成長と創造の力の恩恵を得られるのです。よって願いは大いに通じるでしょう。ただし、成功したからといって才能をひけらかしたり、驕った態度をとるのはよくありません。謙虚な姿勢を守りましょう。

初爻例えるならば竜が地下に潜む様子。才能があっても軽々しく用いることはせず、修養して飛躍の時期を待つとよい。驕りや焦りは禁物である。
二爻潜んでいた竜がようやく地上に顔を出したように才能に芽が出る。信頼する目上の人に認められれば、己を伸ばす好機となるだろう。
三爻警戒を要するが、終日つとめてはげみ、夕方振り返って反省するような慎んだ態度でいれば、災いは避けられる。
四爻躍進を目前にしていても未だ淵にいるがごとく初心をもって事に臨めば、災いを避けられる。
五爻例えるなら竜が天にあるように才能が開花し、人の上に立つであろう。まわりの有能な人の意見を聞き入れるとよろしい。
上爻亢竜のごとく天高く上りつめ、降りることを忘れてしまった状態。奢り高ぶればかえって悔いを残す結果となるだろう。
用九群竜の姿を見てその頭を見ず。己の才を頼んで人々の先頭に立とうとしてはならない。謙虚に控えめにしていれば吉。
爻辞
原文

卦辞
乾、元亨利貞。

彖伝
彖曰、大哉乾元、萬物資始。乃統天。雲行雨施、品物流形。大明終始、六位時成。時乘六龍、以御天。乾道變化、各正性命、保合太和、乃利貞。首出庶物、萬國咸寧。

象伝
象曰、天行健。君子以自彊不息。

初爻初九。潜龍勿用。
潛龍勿用、陽在下也。
二爻九二。見龍在田。利見大人。
見龍在田、德施普也。
三爻九三。君子終日乾乾、夕惕若。厲无咎。
終日乾乾、反復道也。
四爻九四。或躍在淵。无咎。
或躍在淵、進无咎也。
五爻九五。飛龍在天。利見大人。
飛龍在天、大人造也。
上爻上九。亢龍有悔。
亢龍有悔、盈不可久也。
用九用九。見羣龍无首。吉。
用九、天德不可爲首也。
爻辞・小象