59.風水渙(ふうすいかん)

キーワード

散る・離散

卦辞
例え離散したとしても、再びこれを集める手段を講じれば願いは通じるであろう。例えるならば、王が宗廟で祭祀を執り行い、離散した祖先の霊を集めるのがそれである。大川を渡るような大事を行ってもよろしい。ただし、正道を守って努力しなければならない。

象伝
風が水の上を吹き渡って水を散らすさまが渙である。古代の聖王はこの象にのっとって、上帝を祭り祖先の廟を立てて離散した祖先の霊を集め、さらには民の人心が離れることを防いだのである。

解説
この卦は集団の離散を暗示します。集団の解散には、チームの解散、部署の解散、企業の倒産など様々な形が当てはまりますが、いずれも人間が社会的活動をするうえでごくありふれた現象だといってよいでしょう。解散の原因については、その活動の方針が間違っていたり、役割が終わって必要とされなくなったことなどが主に考えられます。例えば企業の倒産は、社会から必要とされなくなった事が原因だといえます。それを無理につなぎとめようとするのは自然の理に逆らうことになるのでよろしくありません。集団が解散するという過程も社会全体の健全性にとっては必要不可欠なものなのです。無理につなぎ留めようとしなくても、人に必要とされるアイデアが生まれれば、再び企業という集団が自然に形成されます。よって、散ることと集まることは対になる理であり、離散したとしても再び集まる手段があれば願いは通じます。人を集めるアイデアや手段があれば、大事を行って成功を収めることができるでしょう。

初爻離散のはじめにあたり、馬を用いて救う。馬が強壮であれば吉である。
二爻離散の際、肘かけにも例えられるような身を安んじられる所に寄って落ち着きを取り戻す。悔いはなくなる。
三爻わが身を顧みず尽くす心がけである。悔いはなくなる。
四爻私党を解散して、ひたすら君主を助け天下万民のためにつくそうとする。大成功を得られて大いに吉である。私党を解散すれば自然に立派な才徳を備えた君子が集まるが、それは何故なのか。このあたりの道理は凡人の理解の及ぶところではない。
五爻人心が離散されようとする危機に際し、大号令を発する。その号令は汗が決してもとに戻らぬように、あくまで一貫して取り消しができない覚悟で行うべきである。このようであれば、王としてその座を守っていても災いはない。
上爻流血沙汰が起こるような危険な状況から遠ざかり、悠々としている。災いはない。
爻辞
原文

卦辞
渙、亨。王假有廟。利渉大川。利貞。

彖伝
彖曰、渙、亨、剛來而不竆、柔得位乎外而上同。王假有廟、王乃在中也。利渉大川、乘木有功也。

象伝
象曰、風行水上、渙。先王以享于帝立廟。

初爻初六。用拯馬壯。吉。
象曰、初六之吉、順也。
二爻九二。渙奔其机。悔亡。
象曰、渙奔其机、得願也。
三爻六三。渙其躬。无悔。
象曰、渙其躬、志在外也。
四爻六四。渙其羣。元吉。渙有丘。匪夷所思。
象曰、渙其羣、元吉、光大也。
五爻九五。渙汗其大號。渙王居、无咎。
象曰、王居无咎、正位也。
上爻上九。渙其血、去逖出。无咎。
象曰、渙其血、遠害也。
爻辞・小象