64.火水未済(かすいびせい)

キーワード

未完成・未だ済まず

卦辞
願いはやがて通じる。ただし、今は子狐が川を渡ろうとしても、あと少しで力つきてその尾を濡らし、結局は渡れないような有様なので、よろしいところが一つもない。

象伝
火が水の上にあって所を得ないさまが未済である。君子はこの象にのっとって、慎重に物の性質を分別し、ふさわしい場所に置くように努めるのである。

解説
未済は未完成の意味。この卦が出たときは何事も中途半端になりがちです。あなたは目標を定めてもいつも三日坊主で物事を放り出していないでしょうか?卦辞の通り、努力すれば願いが通じるのですから、最初から最後まで初志貫徹して物事に取り組むとよいでしょう。女性初の大西洋単独横断飛行を成し遂げたアメリカ人女性、アメリア・イアハートは「最も難しいのは行動を決意することであり、残りは単なる粘り強さです」 と述べています。一度やると決めたら、粘り強さをもって最後までやり通しましょう。そうすれば、願いは通じるのです。

初爻自分の実力が足りないにもかかわらず盲進してしまう。例えるならば川を渡ろうとして失敗し、その尻尾を濡らす狐のようである。よろしくない。
二爻盲進せず自重する。例えるならば車輪を引き戻して自ら止まる車のようである。しっかりと正道を保って吉。
三爻未だ済らず。積極的に前進して事にあたるのは凶だが、時機がくれば大川を渡るような大事に踏み切ってもよい。
四爻正道を保てば吉。悔いはなくなる。だが大変な努力が必要であり、それでも勇気を振り絞って蛮族を征伐すれば、三年間の長期戦の末に大国に封ぜられるような武勲をたてられる。
五爻正道を貫いて吉であり、悔いはない。君子として光り輝く徳を持ち、心にも誠があって、吉である。
上爻火水未済の時も終わりに差し掛かろうとしている。誠の心を失わず、静かに悠然と時勢の転換を待つ心構えであれば、災いはない。しかし事が成らないことに焦って酒におぼれ首まで浸かるようなことがあれば、例え誠実の志があっても今まで積み上げてきた良いものを失ってしまう。
爻辞
原文

卦辞
未濟、亨。小狐汔濟、濡其尾。无攸利。

彖伝
彖曰、未濟、亨、柔得中也。小狐汔濟、未出中也。濡其尾、无攸利、不續終也。雖不當位、剛柔應也。

象伝
象曰、火在水上、未濟。君子以愼辨物居方。

初爻初六。濡其尾。吝。
象曰、濡其尾、亦不知極也。
二爻九二。曳其輪。貞吉。
象曰、九二貞吉、中以行正也。
三爻六三。未濟。征凶。利渉大川。
象曰、未濟、征凶、位不當也。
四爻九四。貞吉悔亡。震用伐鬼方、三年有賞于大國。
象曰、貞吉悔亡、志行也。
五爻六五。貞吉无悔。君子之光。有孚吉。
象曰、君子之光、其暉吉也。
上爻上九。有孚于飮酒。无咎。濡其首、有孚失是。
象曰、飮酒濡首、亦不知節也。
爻辞・小象