43.沢天夬(たくてんかい)

キーワード

決断

卦辞
君子が決断して小人を非難排斥する象。小人を排斥する際、いきなり朝廷に赴いて彼らの罪を訴えるのは、たとえ誠意をもって行ったとしても危険がある。よって、まずは慎重に自分の領邑から声を上げるべきである。また武力を恃んで戦をしかけるのではなく、徳をもって相手を自ら悔い改めさせる方がよりよい手段といえる。このようにすれば進んで事を行ってよろしい。

象伝
沢が天の上にのぼるさまが夬である。天にのぼるまで水沢の勢いが盛んになれば、必ず決壊して下に降り注ぐようになる。それゆえに、君子はこの象にのっとって、下々に及ぶまで恩禄を施し、徳を出し惜しむことを忌み嫌ったのである。

解説
夬は決断の意味。この卦はあなたが何らかの決断に迫られていることを示しています。断固とした信念で決断を下してはじめて物事はその実現に向かって動き始めるのです。米国の思想家ラルフ・ワルド・エマーソンは「ひとたびあなたが決断を下せば、全宇宙は実現に向けてあなたに協力しはじめるのだ」という言葉を残しています。また同じく米国のフォード・モーター創業者、ヘンリー・フォードは「決断しないでいることは、時に間違った行動よりたちが悪い」と述べています。問題を先送りせず、決断を下して実行に移すとよいでしょう。ただし卦辞にもあるように、その実行にはリスクが付きまといます。慎重に物事を進めるようにしてください。

初爻前進しようという意欲は旺盛であるが、進んでも勝ち目がない。勝てないとわかって進むのは問題である。
二爻敵兵を警戒し、仲間に注意の叫びをあげる。このようであれば、夜襲があっても心配はいらない。
三爻小人を退治しようという決意が頬骨まで現れている。このように血気にはやるのは凶。しかし君子は決行するときは思い切って決行すべきである。雨で濡れたように退治すべき小人と和合するという濡れ衣を着せられ、疑いの目で見られ、怒りを買うかもしれないが、その本領を忘れなければ問題はない。
四爻思い切って決行しようとしてもためらってしまう。例えていうならば、座ろうとしても尻の皮が破れて座れないような状況。このような時は羊飼いが羊の群行性を利用するように他の君子についていけば悔いもなくなるだろう。しかしこの忠告も聞く耳をもたないほどの愚かさである。
五爻山ごぼうを根こそぎ抜き去るように、小人は徹底して除き去ることだ。中道を守れば問題ない。
上爻君子に排斥を決断される。泣き叫んで救いを求めても無駄である。最終的に凶。
爻辞
原文

卦辞
夬、揚于王庭。孚號、有厲。告自邑。不利卽戎。利有攸往。

彖伝
彖曰、夬、決也。剛決柔也。健而說、決而和。揚于王庭、柔乘五剛也。孚號、有厲、其危乃光也。告自邑、不利卽戎、所尙乃竆也。利有攸往、剛長乃終也。

象伝
象曰、澤上於天、夬。君子以施祿及下、居德則忌。

初爻初九。壯于前趾。往不勝爲咎。
象曰、不勝而往、咎也。
二爻九二。惕號。莫夜有戎勿恤。
象曰、有戎勿恤、得中道也。
三爻九三。壯于頄。有凶。君子夬夬。獨行遇雨。若濡有慍、无咎。
象曰、君子夬夬、終无咎也。
四爻九四。臀无膚。其行次且。牽羊悔亡。聞言不信。
象曰、其行次且、位不當也。聞言不信、聰不明也。
五爻九五。莧陸。夬夬。中行无咎。
象曰、中行无咎、中未光也。
上爻上六。无號。終有凶。
象曰、无號之凶、終不可長也。
爻辞・小象