42.風雷益(ふうらいえき)

キーワード

増加

卦辞
進んで事を為すによろしい。大川を渡るような大事を行うにもよいであろう。

象伝
風と雷があるのが益である。君子はこの象にのっとって、善を見ればただちに学びとり、過ちがあればただちに改めるのである。

解説
益は皿に大きく盛り付け、あふれんばかりになった様子を表す象から増加の意味を持ちます。今のあなたはやる気に満ち溢れ、破竹の勢いがあります。このような時は、その勢いを保ったまま物事に当たるとよいでしょう。大事業を始めるにも良い卦です。ただし、富ばかりを盲目的に追及するのはよくありません。大きく利益をとるには必ずリスクがついてまわりますから、常日頃からリスクを最小に抑える努力をすべきです。また、この卦は「上を損して下を益す」という意味もあります。よって、あなたが「与える」ことによって物事がうまくいくことを暗示します。もちろん立場によって解釈は異なりますが、経営者であれば従業員のボーナスを増やすのに適したタイミングであるかもしれませんし、家族であればこずかいを増やしたり、家族サービスをしたり、あるいはどこかに寄付をするなどの行動をとるとよいかもしれません。

初爻大いに仕事をこなして功績を為すのによろしい。大吉。災いはない。例え身分や位が低くても問題は無い。
二爻天からの助けや目上の人から助力が得られる。その成功は十朋(貝でできた貨幣二枚が一朋。ここでは高価であることを意味する)の亀甲で占なうまでもない。いつまでも正道を固守すれば吉。王が豊年を祈って天帝を祭れば吉。
三爻戦争や飢饉など、国家の試練を克服して自分に利益をもたらせば問題はない。誠意をもって中道を歩めば、王公に謁見し圭(古代中国で帝王が諸侯に与える先端の尖った玉の板。王侯に封建する際にその証として与えた。)を捧げる機会に恵まれる。
四爻常に正しい態度をとり保ちつつ王に進言すれば、王も自分の意見を採り入れてくれるだろう。遷都するような大事を行ってもよろしい。王が意見を採り入れるのは、自分に私心がなく、民衆に利益をもたらそうとする意志を悟るからである。
五爻誠意があって民衆に対する恵みの心が深い。問うまでもなく大いに吉である。民もそれに応え、信頼して心服するに至るだろう。
上爻自分の利益ばかりを追求し、民衆のために利益をもたらそうとする考えがない。したがって、人から非難や攻撃を受けることになる。私欲にまみれて恒常心を保てないから、凶である。
爻辞
原文

卦辞
益、利有攸往。利渉大川。

彖伝
彖曰、益、損上益下。民說无疆。自上下下、其道大光。利有攸往、中正有慶。利渉大川、木道乃行。益動而巽、日進无疆。天施地生、其益无方。凡益之道、與時偕行。

象伝
象曰、風雷、益。君子以見善則遷、有過則改。

初爻初九。利用爲大作。元吉。无咎。
象曰、元吉无咎、下不厚事也。
二爻六二。或益之、十朋之龜弗克違。永貞吉。王用享于帝。吉。
象曰、或益之、自外來也。
三爻六三。益之用凶事、无咎。有孚中行、告公用圭。
象曰、益用凶事、固有之也。
四爻六四。中行告公從。利用爲依遷國。
象曰、告公從、以益志也。
五爻九五。有孚惠心。勿問元吉。有孚惠我德。
象曰、有孚惠心、勿問之矣。惠我德、大得志也。
上爻上九。莫益之。或擊之。立心勿恆。凶。
象曰、莫益之、偏辭也。或擊之、自外來也。
爻辞・小象