41.山沢損(さんたくそん)

キーワード

減少・減らす

卦辞
誠意があれば大いに吉であり、災いはない。ただし正道を守って努力しなければならない。進んで事を為すにもよいであろう。祭礼の時にいたずらに豪華な供物をささげる必要はなく、誠意さえあれば質素な二枚の竹皿に供物を盛るだけでも神を祭ることができるのである。

象伝
山の下に沢があるのが損であり、君子がまさに損すべきものは怒りと貪欲である。君子はこの象にのっとって、心に生じた怒りをおさめ、欲をふさぐことを心がけるのである。

解説
損は減少の意味。損という文字から悪い卦だと思われがちですが、この卦は意志をもって「減らす」という意味です。長期的な成功を収めた二人の倹約家のエピソードを紹介しましょう。一人目は江戸幕府を開いた徳川家康です。ある日、神社で参拝していた家康が手を清めて拭こうとしたとき、一陣の風が吹いてきて懐紙を吹き飛ばしてしまいました。家康はあわてて懐紙を追いかけます。その恰好はもとより、今で言うティッシュ一枚を天下人が追いかける事がおかしかったので、お供の大名たちはクスクスと笑いました。 紙を取って戻って来た家康は、大名たちを睨み付けてこう言いました。 「わしは、このケチのおかげで天下を取ったのじゃ」。彼の開設した江戸幕府は250年の長きにわたって平和をもたらしました。二人目は米投資家のウォーレン・バフェットです。彼は日本円で8兆7240億円(2015年)の資産を持つ大富豪ですが、住んでいるのは1957年に3万ドルで購入した古い家です。ある日、そんな彼が自分のオフィスのある14階へ行こうとエレベーターに乗っていると、床に1セント硬貨が落ちていることに気づきました。一緒に乗り合わせたパートナー企業の重役たちは誰もそれに気づきません。バフェットは屈んでその1セント硬貨を拾います。パートナー企業の重役たちは、彼が1セントごときを気にかけるのを見て驚きます。後に世界一の金持ちになる人間はこう言いました。「次の10億ドルへの第一歩だ」。バフェットはその資産の大半を慈善団体を通して寄付するとしています。以上が長期的成功を収めた二人の倹約家の非常に似通ったエピソードです。このような精神を持って努力すればこそ、損とついても大いに吉であり、進んで事を為すのによいのです。

初爻私事を投げ出して、速やかに行って人助けしてあげれば問題は無い。ただし、事情を斟酌してほどほどに手助けするとよい。
二爻一貫して正道を保つのが良い。行けば凶。自分が手を出さなくとも相手に利益をもたらすことは可能なのである。
三爻三人で行けば互いに猜疑心が生じ、一人がのけ者になる。一人で行けば、その友が得られる。
四爻持病が治癒する。治癒が速やかであるようにすれば喜びが得られる。問題はない。
五爻天下の万民が奉仕して利益をもたらしてくれる。さらに天からも助けが得られる。十朋(貝でできた貨幣二枚が一朋。ここでは高価であることを意味する)の亀甲で占ってもはずれるはずがないほど、大いに吉である。
上爻自分がなにか損をしなくても人に利益をもたらすことができる。正道を守れば吉である。進んで事を為すのにもよろしい。天下がまるで一家のようになって、個々の家という考え方は皆の頭から消えてなくなる。
爻辞
原文

卦辞
損、有孚、元吉。无咎。可貞。利有攸往。曷之用。二簋可用享。

彖伝
彖曰、損、損下益上、其道上行。損而有孚、元吉、无咎、可貞、利有攸往。曷之用、二簋可用享、二簋應有時。損剛益柔有時。損益盈虛、與時偕行。

象伝
象曰、山下有澤、損。君子以懲忿窒欲。

初爻初九。已事遄往、无咎。酌損之。
象曰、已事遄往、尙合志也。
二爻九二。利貞。征凶。弗損益之。
象曰、九二利貞、中以爲志也。
三爻六三。三人行則損一人。一人行則得其友。
象曰、一人行、三則疑也。
四爻六四。損其疾。使遄有喜。无咎。
象曰、損其疾、亦可喜也。
五爻六五。或益之、十朋之龜弗克違。元吉。
象曰、六五元吉、自上祐也。
上爻上九。弗損益之。无咎。貞吉。利有攸往。得臣无家。
象曰、弗損益之、大得志也。
爻辞・小象