33.天山遯(てんざんとん)

キーワード

退避・撤退

卦辞
人事に例えるならば、つまらない小人の勢いが増して身の回りに危険が迫っている状況である。しかし、退避してでも志を貫けば願いは通じる。今は大事を行うには適さないが、小事を正道に基づき着実に実行するのがよろしい。

象伝
天の下に山があるのが遯である。君子はいくら高い山であっても天の高さには及び得ないこの象にのっとって、小人を遠ざけ、いたずらに憎悪はしなくても厳しくこれに接するのである。

解説
遯は退避の意味。逃げたとしても志を曲げなければ、それは真の敗北ではありません。昔、漢の高祖劉邦は楚の項羽相手に敗北を重ね、時には無様に逃走することもありましたが、最後に決定的な勝利を手にし、天下統一の大事業を成し遂げました。失敗も同様です。何度失敗しようとも挑戦を続けている限り、それは真の失敗ではないのです。よって、この卦が出たときは一時撤退して戦略を練り直すとよいでしょう。

初爻尻尾の位置にいるように逃げ遅れてしまう。進んで事を起こすにはよろしくない。身を隠して時期の到来を待つべきである。
二爻黄牛の革でしっかり縛りつけたように隠遁の意志が固く、だれもこれを説得してときほどくことはできない。
三爻逃げるべき時ではあるが、様々な事情に引きとどめられて逃げることができない。病にかかったように悩み苦しむ。臣や妾を養うくらいの小事をするには良いが、大事をするにはよろしくない。
四爻好きだけれども逃げるべき時は時は逃げる。自制心のある君子だからできることなので、君子であれば吉だが小人ならばそうはいかない。
五爻逃げるべき時には潔く喜んで逃げることができる。立派な精神の持ち主であるから、一貫して正しい態度をとれば吉。
上爻豊かに悠々として逃げる。何の疑念も後悔もないからである。よろしくないはずがない。
爻辞
原文

卦辞
遯、亨。小利貞。

彖伝
彖曰、遯、亨、遯而亨也。剛當位而應、與時行也。小利貞、浸而長也。遯之時義、大矣哉。

象伝
象曰、天下有山、遯。君子以遠小人、不惡而嚴。

初爻初六。遯尾。厲。勿用有攸往。
象曰、遯尾之厲、不往何災也。
二爻六二。執之用黄牛之革。莫之勝說。
象曰、執用黄牛、固志也。
三爻九三。係遯。有疾厲。畜臣妾、吉。
象曰、係遯之厲、有疾憊也。畜臣妾吉、不可大事也。
四爻九四。好遯。君子吉、小人否。
象曰、君子好遯。小人否也。
五爻九五。嘉遯。貞吉。
象曰、嘉遯、貞吉、以正志也。
上爻上九。肥遯。无不利。
象曰、肥遯、无不利、无所疑也。
爻辞・小象