30.離為火(りいか)

キーワード

くっつく・従属する

卦辞
人が人につき従って事に当たる時、正しい態度をとり保てばよろしい。願いは通じる。牝牛のような柔順さを守れば吉。

象伝
明が上下に重なるさまが離である。大人はこの象にのっとって、代々明徳を継承し、四方の人民を照らすのである。

解説
離は麗(つ)く。なにかが付着するという意味です。通常は離れるという意味で使われることが多いので紛らわしいかもしれません。人に付くといっても、盲目的につき従うことを意味していません。リーダーシップの対になる概念としてフォロワーシップという言葉がありますが、これはただリーダーに従うだけではなく、自らが主体となって自発的に意見を述べたり、リーダーの間違いを訂正することを期待される概念です。このポジションをこなすにはリーダーとの信頼関係、および自らの行動の判断基準となる篝火のような明徳を備えている必要があります。このようにフォロワーシップにのっとり人につき従えば、願いは通じるでしょう。

初爻事を始めるにあたり、正道を敬い慎んで歩む。行動を慎しんでいれば災いを避けられるだろう。
二爻中央にいて黄金のように輝く。大いに吉である。
三爻太陽が西に傾き夕暮れが訪れるように、人生にもやがて晩年がやってくる。しかし、それは万物に共通することであることを悟り、酒がめを叩いて歌いつつ残りの人生を楽しむとよい。それができなければ、いたずらに老衰を嘆くようになってしまい、凶である。
四爻突如としてやってくるという強引さでは、所詮他人から受け入れられる余地がない。最期は焼かれて殺されて棄てられるような憂き目に遭うだろう。
五爻涙がとめどもなく流れ、吐息交じりに憂い嘆くような憂き目に遭う。あまり気落ちせず謙虚に身を慎しんでいれば吉である。
上爻王自ら出陣し征伐する。敵の大将の首をとったとしても、雑兵は許すだけの寛大さがあれば問題はない。
爻辞
原文

卦辞
離、利貞。亨。畜牝牛、吉。

彖伝
彖曰、離、麗也。日月麗乎天、百穀草木麗乎土。重明以麗乎正、乃化成天下。柔麗乎中正。故亨。是以畜牝牛吉也。

象伝
象曰、明兩作、離。大人以繼明照于四方。

初爻初九。履錯然。敬之无咎。
象曰、履錯之敬、以辟咎也。
二爻六二。黄離、元吉。
象曰、黄離、元吉、得中道也。
三爻九三。日昃之離。不鼓缶而歌、則大耋之嗟。凶。
象曰、日昃之離、何可久也。
四爻九四。突如其來如。焚如、死如、棄如。
象曰、突如其來如、无所容也。
五爻六五。出涕沱若。戚嗟若。吉。
象曰、六五之吉、離王公也。
上爻上九。王用出征。有嘉折首。獲匪其醜。无咎。
象曰、王用出征、以正邦也。
爻辞・小象