29.坎為水(かんいすい)

キーワード

重なる険難

卦辞
例え苦難に陥っても、心に誠意をもってそれを貫きとおせば願いは通じる。また、思い切って事に当たれば成功して人から尊敬されることもあるであろう。

象伝
水がしきりに流れ来るさまが習坎である。君子はこの絶え間ない流れにのっとって、常に德行を重ねて己を磨き、懇切丁寧に反復して教養を習熟するのである。

解説
この卦は険を表す坎が二つも重なった象をしており、そこから険難のただなかにあって更なる険難に見舞われるという散々な状態を表します。しかし、ピンチに陥るのはチャレンジをしているから、ということもできます。何もかも諦めてしまっていたらピンチには陥りようがありません。もしあなたが険難の中にあったとしても絶対に諦めないで打開を試みてください。諦めなければ困難をチャンスに変えることも可能です。相対性理論を著した物理学者アルベルト・アインシュタインは、「困難の中にこそチャンスがある」という言葉を残しています。よってこの卦は、険難のなかに険難がありながら、願いが通じ、思い切って事に当たれば成功して人から尊敬されることもある。と教えているのです。

初爻ただでさえ深い穴の最も深い部分に落ちてしまった。脱出する道を失い、凶である。
二爻穴に落ちて危険である。しかし、努力すれば少しは道が開ける。
三爻進むも穴、退くも穴で進退が窮まってしまう。最も危ない場所に落ち込んでしまったのだから、今は行動を起こしてはならない。
四爻虚礼を省き何事も質素で簡素なものにして、なによりも誠意が通じるようにしなければならない。例えば君主をもてなすには、一樽の酒、竹製の皿二皿分の食べ物、素焼きの土器を用い、君主との約束事には門ではなく、明るい窓を通じてとりおこなうようにすれば、初めは困難でも最終的には問題ない。
五爻例えるならば、水が穴に溜まりながらも、まだ満ちていない状態。穴の縁と水平になったら這い出ることができ、咎なきを得るだろう。しばらく耐えて待つべきである。
上爻縄で縛られ、いばらで囲まれた牢獄に閉じ込められたようなものである。三年間は出られない。凶である。
爻辞
原文

卦辞
習坎、有孚。維心亨。行有尙。

彖伝
彖曰、習坎、重險也。水流而不盈、行險而不失其信。維心亨、乃以剛中也。行有尙、往有功也。天險、不可升也。地險、山川丘陵也。王公設險、以守其國。險之時用、大矣哉。

象伝
象曰、水洊至、習坎。君子以常德行、習敎事。

初爻初六。習坎、入于坎窞。凶。
象曰、習坎、入坎、失道凶也。
二爻九二。坎有險。求小得。
象曰、求小得、未出中也。
三爻九三。君子終日乾乾、夕惕若。厲无咎。
象曰、來之坎坎、終无功也。
四爻六四。樽酒簋貳、用缶。納約自牖。終无咎。
象曰、樽酒簋貳、剛柔際也。
五爻九五。坎不盈。祇旣平、无咎。
象曰、坎不盈、中未大也。
上爻上六。係用徽纆、寘于叢棘。三歳不得。凶。
象曰、上六失道。凶三歳也。
爻辞・小象