21.火雷噬嗑(からいぜいごう)

キーワード

噛み砕く

卦辞
人事に例えるならば、善人の障害となる悪人を法に照らして処罰し、これを除くことに当たる。善人は安心して暮らせるようになるから、願いは通じるであろう。障害となるものは牢獄を用いてでも取り除くのがよろしい。また法を整備したり、獄を用いて悪人をさばくにふさわしい時期である。

象伝
雷鳴と電光があるのが噬嗑である。古代の聖王はこの電光の瞬きにのっとって刑罰を明らかにし、雷鳴に轟きにのっとって法令を整えたのである。

解説
噬嗑は噛みあわせるの意味。つまり噛みあわせて物を砕く事を意味します。あなたの前途に障害が立ちはだかりますが、それに対して断固とした処置、卦辞の表現を借りれば牢獄を用いるような厳しい対応を取り、障害を除けば目的は達せられるでしょう。甘すぎる対応をすると、かえって足元を見られて逆効果になる可能性があります。また、自分自身や自分が所属する組織の規則・ルールを見直すにも良いタイミングです。このように厳しいルールをもって秩序を保てば、願いは通じるでしょう。

初爻足枷をはめられて、足首を少し傷つけるくらいの小刑を受けるが、これに懲りて大きな罪を犯さないよう注意すれば問題ない。刑を受けるのはあくまでこれ以上悪の道に進まないためである。
二爻徳のある能吏が罪人を裁くのは柔らかい肉を噬むくらい簡単なことであるはずだが、なかなかに手ごわい相手なので、裁きを厳しくしすぎると噛みそこなってこちらが鼻を傷つけてしまうぐらいの害はあるかもしれない。しかし、そのぐらい厳しくしても問題ない。
三爻罪人が屈服せず、なかなかに獄を治めがたい。例えるならば、骨付きの乾燥肉を噬んで食中毒にあたるようなもので、多少の災難はあるが問題はない。
四爻例えるならば噬みきれないほど堅くなった骨付きの乾燥肉を噬むようなもので、罪人の抵抗に遭って獄を治めるのが増々困難になる。しかし、やがて金矢(三十斤の金と百本の束ねた矢。古代中国では裁判官に納めて保証とした)を得て裁判が落着した。困難にあっても耐えて正しく努力していれば、おのずと解決は導かれるのである。吉。
五爻容易とまではいかないが、なんとか獄を治め、終わりを全うすることができた。例えるならば、少し固くなった乾肉を噬んで黄金を得るようなものである。一貫して正しいふるまいをし、警戒して慎重に行動すれば問題はない。
上爻罪人が悔い改めず重罰を受ける象。首かせをはめられ耳を傷つけてしまう。これは道理を聞き分ける聡明さがないからである。凶。
爻辞
原文

卦辞
噬嗑、亨。利用獄。

彖伝
彖曰、頤中有物、曰噬嗑。噬嗑而亨。剛柔分、動而明、雷電合而章。柔得中而上行。雖不當位、利用獄也。

象伝
象曰、雷電、噬嗑。先王以明罰勅法。

初爻初九。屨校滅趾。无咎。
象曰、屨校滅趾、不行也。
二爻六二。噬膚滅鼻。无咎。
象曰、噬膚滅鼻、乘剛也。
三爻六三。噬腊肉遇毒。小吝、无咎。
象曰、遇毒、位不當也。
四爻九四。噬乾胏、得金矢。利艱貞。吉。
象曰、利艱貞、吉、未光也。
五爻六五。噬乾肉、得黄金。貞厲、无咎。
象曰、貞厲无咎、得當也。
上爻上九。何校滅耳。凶。
象曰、何校滅耳、聰不明也。
爻辞・小象