20.風地観(ふうちかん)

キーワード

示す・仰ぎ観る

卦辞
君主が神を祭るに際して手を洗い清め、これから供物を奉ろうとする時のように厳粛で敬虔な心持でいるならば、人々は敬ってこれを仰ぎ観て、誠心が上下に伝播するのである。また、この卦の象は風(巽)が地(坤)の上を吹き渡っているさまが観となる。古代の聖王はこの象に則って、あまねく四方を巡行し、民の風俗を観察して、それぞれふさわしい教えを設けたのである。

象伝
風が地の上を行くのが観である。古代の聖王はこの象にのっとって、あまねく四方を巡行し、民の風俗を観察して、それぞれにふさわしい教えを設けたのである。

解説
観は示す、または仰ぎ観るの意味。人に教えを施す際、自ら手本となって範を示せば、目下の者はこれを仰ぎ見て感化されます。「子は親の背中を見て育つ」という言葉があります。これは残念ながら善悪両方に言えることですが、人は意外なほど他人の行動を見て、そこから影響を受けているのです。ですから、とりわけ組織の上に立つ人間が日常的に不正を行っているようだと、組織全体に悪影響を及ぼします。また、人は他人から影響を受けるのと同様に、環境からも影響を受けます。割れ窓理論という犯罪学の理論では、割れた窓を放置していると、人の目が行き届いていないというサインになり、犯罪を起こしやすい環境を作りだす、としています。それからゴミのポイ捨てや落書きなどの軽犯罪が起こり、徐々にエスカレートして、凶悪犯罪を含めた犯罪が多発するようになるという理論です。これらの悪影響を防ぐためには、各人が常日頃から範となる行動を意識してとらなければなりません。

初爻あまりに幼い視点で物を見る。つまらない小人なら問題ないが、人の上に立つ君子ならば問題がある。
二爻門の隙間から外をうかがい見るように視野が狭い。家を守る女性ならば心構えさえ正しければよいだろう。しかし、やはり君子としては恥ずべきことである。
三爻自らの生き様をかえりみて、適切な時期に進退する。まだ道を見失ってはいない。
四爻立派な君主の徳がいきわたった国の威光を観察する。君主からの賓客の待遇を受け、国事に尽力するとよろしい。※観光という言葉はこの爻辞に由来する。
五爻自分の生きざまをよく振り返って反省する。君子として恥ずかしいところが無ければ問題ない。
上爻官位の無い賢者である。実際に政治に携わってはないが、人々がふるまいをみて模範にしようとしているから、君子として恥ずかしいところがなければ問題はない。
爻辞
原文

卦辞
觀、盥而不薦。有孚顒若。

彖伝
彖曰、大觀在上、順而巽、中正以觀天下。觀、盥而不薦、有孚顒若、下觀而化也。觀天之神道、而四時不忒。聖人以神道設敎、而天下服矣。

象伝
象曰、風行地上、觀。先王以省方、觀民設敎。

初爻初六。童觀。小人无咎。君子吝。
象曰、初六童觀、小人道也。
二爻六二。闚觀。利女貞。
象曰、闚觀、女貞、亦可醜也。
三爻六三。觀我生進退。
象曰、觀我生進退、未失道也。
四爻六四。觀國之光。利用賓于王。
象曰、觀國之光、尙賓也。
五爻九五。觀我生。君子无咎。
象曰、觀我生、觀民也。
上爻上九。觀其生。君子无咎。
象曰、觀其生、志未平也。
爻辞・小象