5.水天需(すいてんじゅ)

キーワード

待つ

卦辞
誠意があれば、大いに願いが通じるであろう。正道を歩んで吉。大川を渡るような大事を行っても問題なく、前進して成功を収め得る。ただし、物事には天の時というものがある。事を起こすに最もふさわしい時機を、いたずらに焦ることなく飲食を楽しみながら待てばよろしい。

象伝
雲が天にのぼり、雨降らんとする時を待つさまが需である。君子はこの象にのっとって、いたずらに焦ることなく、飲食宴楽して時節が到来するのを待つのである。

解説
雲が天にのぼり雨降らんとする時を待つさまが需の象形で、需は「待つ」の意味があります。成功を収めるためには、積極的に行動することは勿論大切ですが、待つといういわば「静」の行動も欠かすことができません。江戸幕府を開いた徳川家康は「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」という川柳があるほど忍耐強い武人でした。そして戦乱の世をそのように忍耐強く行動した結果、江戸幕府という250年以上続く長期的な成功の基礎を築くことができたのです。川柳で対比された織田信長や豊臣秀吉が最終的には短期的な成功しか収められなかったこととは対照的です。この卦が出たならば、今は我慢の時と心得ましょう。チャンスは必ず訪れます。タイミングを見計らい、好機と見たら雷神のごとく行動を起こすと良いでしょう。この卦は、そのようにすれば願いは大いに通じると教えているのです。

初爻郊外の地で時を待つ。日常の仕事をおろそかにせず、軽々しい行動を慎めば災いはない。目標から一歩引いた場所で時を待つとよい。
二爻水辺の砂地で待つ。水辺の危険が近づいている。均衡を保って公平な立場をとるとよい。多少は責められるかもしれないが、最終的には吉となる。
三爻泥地で待つ。水辺の危険がいよいよ近づく。自ら敵を作ってしまうこともあるので、他人を敬い、慎重に行動すれば災いは避けられる。
四爻血の匂いのする殺傷の場所で待つ。既に災難の渦中にいるが、辛抱強く待っていればどん底から這い出ることができる。
五爻困難にあっても酒食を楽しみながら時を待つ。初志を曲げず正しい心構えでいるならば吉。
上爻穴に落ち込んでしまったが、思いがけない客が三人訪れる。これを敬い協力を仰げば最終的には吉。
用九群竜の姿を見てその頭を見ず。己の才を頼んで人々の先頭に立とうとしてはならない。謙虚に控えめにしていれば吉。
爻辞
原文

卦辞
需、有孚。光亨。貞吉。利渉大川。

彖伝
彖曰、需、須也。險在前也。剛健而不陷、其義不困竆矣。需有孚、光亨、貞吉、位乎天位、以正中也。利渉大川、往有功也。

象伝
象曰、雲上於天、需。君子以飮食宴樂。

初爻初九。需于郊。利用恆。无咎。
象曰、需于郊、不犯難行也。利用恆、无咎、未失常也。
二爻九二。需于沙。小有言、終吉。
象曰、需于沙、衍在中也。雖小有言、以吉終也。
三爻九三。需于泥。致寇至。
象曰、需于泥、災在外也。自我致寇、敬愼不敗也。
四爻六四。需于血。出自穴。
象曰、需于血、順以聽也。
五爻九五。需于酒食。貞吉。
象曰、酒食貞吉、以中正也。
上爻上六。入于穴。有不速之客三人來。敬之終吉。
象曰、不速之客來、敬之終吉、雖不當位、未大失也。
爻辞・小象