4.山水蒙(さんすいもう)

キーワード

無知蒙昧・未熟・教育

卦辞
教育により蒙を啓く事で願いは通じるであろう。教育の理想を言えば、教師から子弟に教えを強いるのではなく、子弟の方から積極的に教えを請うのが本来の姿であるべきである。占筮の場合においても、誠意を込めた初筮は正しい答えを告げるが、二度三度と占いをくりかえすようであれば、神聖な筮が涜れるので告げるべきではない。教育も聖なる仕事ということができる。最初の知りたいという好奇心こそが大切なのである。よって、そのような戒めをもって正しい態度で努力すればよろしい。

象伝
山のふもとから泉が湧き出ているさまが蒙である。君子はこの象にのっとって、果敢に行動し、その徳を涵養するのである。

解説
蒙は無知蒙昧の蒙。若者が未熟で道理に暗いことを象ります。よって、あなたが目的を達するにはまだまだ勉強が足りない可能性があります。若者が無知なのは当然です。誰でも最初は無知だからこそ9年間も義務教育で時間をかけて、学問を修める機会が与えられているのです。奴隷解放に尽力した米国の16代大統領エイブラハム・リンカーンは「もし、木を切り倒すのに6時間与えられたら、私は最初の4時間を斧を研ぐのに費やすだろう。」という言葉で自己修養の大切さを述べています。また、学問を修めるだけでなく、道徳を身につけることも大切です。長く生きれば生きるほど経験が増し、知恵がつくものですが、目先の利益を盲目的に追い求める浅知恵ではなく、長期的な成功を皆で勝ち取るための深い智慧を身につけることが大切です。この卦はそのように自らの無知蒙昧を啓けば願いは通じると教えているのですから、積極的に学習し目標に取り組むとよいでしょう。

初爻無知で賤しい少年は不良になる恐れもあるから、刑罰を用いるぐらいの態度で教えを施すのがよろしい。手かせ足かせを外して自由に振る舞わせることは少年のためにもかえって良くないだろう。
二爻無知な者を包みこみ吉であり、妻をめとるのも吉。家庭で言うならば、父や父なき後の母を助け、一家をささえる立派な子のような存在である。
三爻妻を娶る相手としてよろしくない。例え娶ったとしても、金持ちの男をみれば移り気してしまう。行いも不謹慎であり、どこからどう見てもよろしくない。
四爻自分の無知蒙昧に苦しむ。頼るべき相手もおらず、よろしくない。
五爻例え何もしらない少年だとしても、素直で柔順の美徳を持っている。良き師を得て吉である。
上爻無知で頑固で思いあがった者に対しては厳しく指導するべきだが、怒りのあまり体罰を加えたり攻撃的になるのはよろしくない。しかし、不正や誘惑から守る場合には攻撃的になるのもまたよろしい。
爻辞
原文

卦辞
蒙、亨。匪我求童蒙。童蒙求我。初筮告。再三瀆。瀆則不告。利貞。

彖伝
彖曰、蒙、山下有險。險而止蒙。蒙亨、以亨行、時中也。匪我求童蒙、童蒙求我、志應也。初筮告、以剛中也。再三瀆、瀆則不告、瀆蒙也。蒙以養正、聖功也。

象伝
象曰、山下出泉、蒙。君子以果行育德。

初爻初六。發蒙。利用刑人、用說桎梏。以往吝。
象曰、利用刑人、以正法也。
二爻九二。包蒙、吉。納婦、吉。子克家。
象曰、子克家、剛柔接也。
三爻六三。勿用取女。見金夫、不有躬。无攸利。
象曰、勿用取女、行不順也。
四爻六四。困蒙。吝。
象曰、困蒙之吝、獨遠實也。
五爻六五。童蒙。吉。
象曰、童蒙之吉、順以巽也。
上爻上九。擊蒙。不利爲寇。利禦寇。
象曰、利用禦寇、上下順也。
爻辞・小象