3.水雷屯(すいらいちゅん)

キーワード

はじめに困難がある・産みの苦しみ・芽生え

卦辞
願いは大いに通じるであろう。正道を守って努力するとよろしい。ただし、急いで事に当たってはならない。天下に例えるならば、未だ建国の草創期にあたるから、有力な諸侯を各地に封じ、まずは民に安寧をもたらすべきである。

象伝
雲が厚く垂れ込め、雷が低く鳴り響きながらも、未だ恵みの雨をもたらさないさまが屯である。君子はこの象にのっとって、初心に返って国家経綸の志をたてるのである。

解説
屯は事のはじめに困難にあって行き悩むという意味であり、まさに若芽が地上に萌え出ようとしているこの漢字の象形に由来します。事を始めるにあたり、なによりも重要なのが基礎です。建物も土台が腐っていれば、その上になにを積み重ねても容易に崩れ去ってしまうでしょう。この卦は生みの苦しみがあることを暗に示しますが、土台のように大事なものだからこそ根気よく時間をかけて作りださなければならないのです。よって焦りは禁物です。時節が到来すれば、卦辞にあるとおり、願いは大いに通じるのですから、今は基礎となる仕事を着実にこなすべきです。

初爻物事が思うようにいかず悩み苦しむかもしれないが、初志を曲げず正しい道を歩むべきである。建国草創の時期にあたり、民間から優秀な者を採用し、侯として封じればやがて下民からの信服を得られるだろう。高貴な身分であっても尊大に振る舞わず腰を低くしていれば人望を得られるのだ。
二爻物事がうまくいかず、歩いて彷徨い、馬に乗ってぐるぐる回るばかりの有様である。そんな時、自分に危害を加えるかと思っていた男から思いがけず求婚されるが、誘いを受けずに十年待てば本来の夫との縁があるだろう。
三爻道案内もなしに山野で鹿を追いかければ道に迷うのは当然のこと。欲望にかられ、詳しくない事に深く首をつっこむと手痛い目に遭うだろう。わずかでも危険を感じたらすぐさま引き返すべきである。
四爻困難に遭い、馬に乗っても同じ場所をぐるぐるするばかり。礼にかなった求婚に応じ、協力して物事に当たれば万事吉にして悪いことはない。
五爻小さいことを着実に進めるならば吉だが、いきなり大事業を行うと凶。一旦物事から離れ、落ち着いてから再出発するとよろしい。
上爻孤立無援で物事がうまく進まない。馬に乗っても同じところをグルグル回るばかり。憂いて血の涙がとめどなく流れ落ちる。
爻辞
原文

卦辞
屯、元亨。利貞。勿用有攸往。利建侯。

彖伝
彖曰、屯、剛柔始交而難生、動乎險中。大亨貞、雷雨之動滿盈。天造草昧、宜建侯而不寧。

象伝
象曰、雲雷、屯。君子以經綸。

初爻初九。磐桓。利居貞。利建侯。
象曰、雖磐桓、志行正也。以貴下賤、大得民也。
二爻六二。屯如、邅如、乘馬班如。匪寇婚媾。女子貞不字、十年乃字。
象曰、六二之難、乘剛也。十年乃字、反常也。
三爻六三。卽鹿无虞。惟入于林中。君子幾不如舍。往吝。
象曰、卽鹿无虞、以從禽也。君子舍之、往吝、竆也。
四爻六四。乘馬班如。求婚媾往、吉无不利。
象曰、求而往、明也。
五爻九五。屯其膏。小貞吉、大貞凶。
象曰、屯其膏、施未光也。
上爻上六。乘馬班如。泣血漣如。
象曰、泣血漣如、何可長也。
爻辞・小象